【御礼】 2023年6月1日発行の『 JCB ザ・プレミアム 』に掲載されました。
JCBカードの上得意様向けの雑誌ということで、非常に恐縮しております。
取材から紙面制作に至るまで『上質』な雑誌にふさわしく、文章も非常に素晴らしいです!
この感動を共有したくて自ら文字起こしをいたしました。佐藤様、土井様、カメラマン様ありがとうございます!!
(長文ではありますが)よろしければご覧下さいませ!!!
暮らしを彩る日本の逸品
「九谷陶泉」の九谷焼ロディ
第14回
石川県を代表する伝統工芸品「九谷焼」は、江戸時代に生まれ、色絵磁器と呼ばれる色鮮やかな絵柄で知られる。今回ご紹介するのは、イタリア生まれの子供向け玩具「ロディ」をデザインのベースにした置物「九谷焼ロディ」。
愛らしいデザインと温かみで、九谷焼の新しい魅力を打ち出した「九谷陶泉」に、その開発秘話を聞いた。
取材・文/土井ゆう子 写真/島本一男
九谷焼とイタリア生まれの馬の玩具の融合
江戸時代初期、石川県南部の九谷村で陶石が発見されたことから始まったといわれる九谷焼。江戸時代後期に加賀藩が金沢に春日山窯を開くと、その後、次々と窯が開かれ、今日の源流となっている。九谷焼は日本を代表する色絵陶磁器で、和絵の具による色とりどりの「上絵付け」が特徴。「九谷五彩」と呼ばれる赤・黄・緑・紫・紺青の絵の具を厚く盛りあげて塗る着彩が有名だ。仕事は分業で行われ、生地を作る‶窯元〟と、絵付けを行う‶作家〟の手を経て、ひとつの作品が完成する。
「九谷焼ロディ」は九谷焼の製造卸売業を行う「九谷陶泉」の、山元歩専務のひらめきがきっかけで生まれたという。
「あるとき、娘さんが子どもを出産したので、ご自身の地元にゆかりのある九谷焼を出産祝いに贈りたい、という女性からの相談を受けました。当初、花器やお食い初め用の食器を提案したのですが、マンションで暮らす娘さんのライフスタイルに、なじまないのではないかと悩まれていました。そんな折に、ふと目にしたのが‶ロディ〟。その瞬間、これだ!と感じました」と山元氏。
イタリア生まれのロディとのコラボで九谷焼を幅広い年代に
ロディとは馬をモチーフにした子ども用の乗用玩具。1984年にイタリアで誕生し、世界中で親しまれている。一方、九谷焼には器や花瓶だけでなく、招き猫などの置物を制作してきた伝統がある。「馬は昔から‶飛翔〟や‶跳ねあがる〟などを連想させる、縁起のいい生き物とされてきました。九谷焼の伝統的な技法で彩った愛らしいデザインのロディは、幅広い層に受け入れられ、母・娘・孫3代にわたって愛してもらえる贈り物になると思いました。」
さっそくロディのライセンスをもつ企業と提携を結び制作に取りかかるが、商品化までには1年半を要したという。
まず、原型師が基本となる型を作る。オリジナルのロディをそのまま縮小してもかわいいフォルムにはならない。大きさや丸みなど、試行錯誤を重ねて型を制作した。この型で窯元が粘土でロディを作り素焼きし、さらに釉薬をかけて焼成する。次に白生地のロディを作家のところへ持ち込み、絵付けをして再度焼成し、完成となる。要所要所でライセンサーの監修を受け、デザインの微調整を繰り返す。
こうして完成した「九谷焼ロディ」は、初めてのお客様となったおばあさま、そして娘さんにもたいへん喜んでいただけました」山元氏。以降、加賀地方在住の九谷焼作家30~40名による絵付けで、約75種が制作されている。
古典的な技法を用いる作家の作品もあれば、従来の表現技法によりとらわれない作家の作品もある。共通するのは愛らしいロディの世界親と、温かみや華やかさのある九谷焼の魅力。伝統工芸の世界に新しい風を吹き込む九谷焼ロディは、幸せを願う贈り物として大切な想いを運んでくれるだろう。